この前の金曜日に始業式がありました。その日は晴れで、ぼくはウキウキしながら学校に行きました。これから入学式に出るのでしょう、小さな体にブレザーを着てランドセルを背負って、おめかしした両親と歩いていく新1年生をたくさん見かけました。こうやって新しい子どもたちが学校に入学していくのかと考えると、なんだか不思議な気持ちです。自分もずっと昔はこのようにして両親と歩いていたのかなと思ったけれど、詳しくはもう覚えてもいません。
ちょうど桜が満開で、ぼくはその花びらを掴んだり、口の中に入れたりしながらいつも通りの時間に校門をくぐりました。夏休みに比べると休みの期間は短いので、そんなに懐かしい感じはしませんが、校舎の中は新しい学年になって浮足立った生徒たちでなんだかわくわくする気がします。
6年生になったら教室も変わります。ちょうど昇降口の所で知り合いの1組の戸塚くんに出くわしたので、いつもだったらあまり話さないかもしれないけれど、やっぱり新学期初日ということもあって何が起きるかわからないので、春休み中にしたことを話しながら、6年生の教室のところまで行きました。戸塚くんは家族でTDLに行ったらしく、ランドセルのホルダーにドナルドダックのキーホルダーをつけていました。
まず、戸塚くんが6年1組の教室の扉の前に貼り出してある、クラス名簿と席順の書いてあるプリントを見たので、ぼくは後ろでずっと見ていると、戸塚くんは笑いながら「アッあった」と言って、そのままヒラヒラ手を振りながら教室へ消えていったので、ぼくも「ばいばい」と手を振って別れました。1組の教室は、全然普段関わらない人たちばかりなので、クラス替えというか、メンバー替えはほとんどないんだなと思いました。
次に、ぼくは6年2組の扉の前に行きました。クラス名簿を見ると、出席番号順に生徒の名前がのっていて、ぼくの名前もありました。やっぱり、クラスのメンバーは5年生の頃から変わっていないようです。座席は、年度はじめなのでちゃんと出席番号順に並んでいます。後ろから教室に入ると、中にはもう半分くらいのクラスメイトがいます。みんな、他の友達と話したり、席に座ってノートや本を開いていたり、後ろのロッカーにみんなで座っていたり、机にうつぶせて寝ていたりと、様々です。
前には桃山くんがいます。桃山くんは後ろの学級図書にある本を読んでいました。井伏鱒二の『黒い雨』です。ぼくもちらっと読んだことがあります。桃山くんのつむじのあたりをボーッと眺めていると、やがて前の扉から、のそっとタニシ先生が入ってきました。みんなちょっと静かになって、ロッカーで喋っていた人たちも席に戻ったみたいです。
「あー、いいよ今日は礼とかは。めんどくさいからね。ところで、桜満開だよね。きれいだなー。私も通勤中、車を運転しながらそっちに目がいっちゃってね、危うく路肩にはみ出して新入生ひいちゃうんじゃないかって、あはは。みんな、未来への希望にあふれてるかな?それとも、新学期が始まっちゃってゆううつかな?クラス替えがないからね、あまり実感はないかもだけど、私達は最高学年です。下級生のお手本になるように胸張っていこー」
みんな「はあーい」と気乗りのしないような返事をしました。そのあとタニシ先生は今日の予定や、細かな連絡をしたあと、1時間目は大掃除の時間で、ぼくは廊下に乾雑巾をかけたりしました。2時間目は学活で、6年生になって使う教科書が配られて名前を書いたり、身長にあわない椅子や机を交換したり、ロッカーに自分の名前を書いたりしました。3時間目は学年集会です。体育館で、校長先生のお話を聞いたりしました。1組担任の西山先生も何か話していました。
そして今日は終わりです。帰りの会が終わってみんながランドセルを背負い出してから、タニシ先生が、「ところで記念撮影しよう」といって、バックから取り出した棒の先に自分のスマホを取り付けました。「自撮り棒だ」とみんなはちょっとザワザワしました。ぼくは、学校のカメラじゃなくて自分の私物で写真撮るのは公私混同じゃないかな?と思いました。でも、わぁー、といった感じで、みんなはタニシ先生のそばに集まります。女子が多いようです。
ぼくがはたから見ていると、なんと、ぼくの好きなはなちゃんもタニシ先生の横にくっついているではありませんか!楽しそうに笑っています。いけないと思って、ぼくも後ろの方から先生に近寄りました。「そんなに全員は撮れないよ〜」と言って、タニシ先生は手を目一杯伸ばして、写真を撮ろうとしました。その時、タニシ先生の後ろにいた女子が、「シャシャが写真に入らなそうだから、前に出るから待って」と言いました。タニシ先生は振り向きました。
その子は身体の小さな子で、佐々山さんと言います。佐々山さんが出てくる間、みんなは黙りこくっていました。ぼくは、その瞬間がとてもイヤでした。例えば、もしも佐々山さんがもたついてずっと出てこられなかったら、きっと誰かが「はやくしろよ」と声を上げるかもしれないのです。それが起きる可能性があるのが、なんだかジゴクへの扉が開いたみたいに思えたのです。
佐々山さんはすぐにひょこっと出てきました。タニシ先生は、「じゃ、はいチーズ」と言って写真を3枚撮りました。3枚目はみんなで変顔をしました。楽しくてけらけら笑いあいました。
よかったよかった。
おしまい。
2016年4月10日日曜日
2016年4月3日日曜日
2016年4月3日 ソメイヨシノとはなちゃん
春休みに入ってだいぶ時間がたちました。この前の金曜日に修了式がありました。それからは、いつも通り公文の教室があって、あとは家で遊んだり、外に遊びに行ったりしています。家ではゲームをしているか、テレビを見ているか、マンガを読んでいるかパソコンをしているか、本を読んでいたりします。毎日ぼけーっとしています。
一度、自転車で広瀬川をたどって、海の方まで行ってみようと思いました。でも、外に出たのが夕方の3時くらいだったので、長町を越えて、ビルがたくさん建っているのを眺めながら河川敷をずっと走っていると、名取川と広瀬川が合流するあたりで5時くらいになってしまったので、その合流しているところを観察してから家に帰りました。
いつの間にか、4月になってしまいました。新年度に変わって、ぼくは小学6年生になりました。小学校最後の学年です。考えてみると、小学校1~3年の頃に比べると、時間のたちかたが早くなったような気がします。なにか、年をとるごとに時間の流れが早く感じるという法則を聞いたことがありますが、くわしくは忘れました。
エイプリルフールの日についたウソは、会社でお仕事をしているお父さんに電話をかけて、「家が燃えた」「ええっ」「ごめん、エイプリルフール」「俺の仕事中にそんなことで電話をかけるな」と話したくらいです。
そういえば、昨日近所の文房具屋で両面テープとかを買った帰りに、ペンギン駅前でクラスのはなちゃんが、両親の人と自転車をこいでいるところを見かけました。はなちゃんは、実は僕が好きな女の子です。これまで○○ちゃんと書いていましたが、本当ははなちゃんなのです。
はなちゃんの家は三姉妹で、はなちゃんは次女なんだそうです。髪がとても長くて、腰の上くらいまであります。小学3年生の頃から伸ばし続けていると聞いたことがあります。なんでそんなに長い髪がいいのかはわかりません。はなちゃんのお姉ちゃんが髪で遊ぶことがあるらしく、はなちゃんは髪に時々編み込みをしてみたり、ヘアアクセサリーをして学校に来ては、他の女子たちに「かわいー、かわいー」と言われています。
ちょうど仙台は、やっと桜前線が北上してきていて、駅前のロータリーに何本か植えられているソメイヨシノも花をつけていました。はなちゃんが向こうから自転車に乗ってやってくるのを見つけると、僕の心臓は急に、水風船がハレツするみたいに動き出して、心拍数が3倍くらいになりました。
はなちゃんの後ろにはお父さんとお母さんらしい人が、はなちゃんと一緒に自転車をこいでいました。なんとなく僕はうれしくなりました。僕が勇気を出して「はなちゃん」と声をかけると、はなちゃんは目を丸くして口を開けて、驚いたみたいな顔で「けりもくん」と言いました。そのままはなちゃんは僕を通り過ぎて行きました。
そのあと角を曲がるまでに、はなちゃんは2、3度振り返ったので、僕は立ち止まって手を振りました。風が強く吹いて、桜の花びらがひとひら舞いました。ご両親がはなちゃんに何か話しかけているのが見えました。もしかしたら、ちょっとからかい気味に、今の男の子は誰なんだと聞いているのかもしれません。そう想像すると、ぼくはなんだか嬉しい気持ちがしました。
でも、もしかしたら、あまり後ろを振り向いて自転車でコケたら危ないから、はなちゃんに前を向けと注意していただけかもしれません。たぶん、はなちゃんは髪が長いので、振り返ると髪の毛が目のあたりにまとわりついてしまい、視界がふさがれて危険なのです。
どちらが正解なんだろう?
まあいいや。
おわり。
一度、自転車で広瀬川をたどって、海の方まで行ってみようと思いました。でも、外に出たのが夕方の3時くらいだったので、長町を越えて、ビルがたくさん建っているのを眺めながら河川敷をずっと走っていると、名取川と広瀬川が合流するあたりで5時くらいになってしまったので、その合流しているところを観察してから家に帰りました。
いつの間にか、4月になってしまいました。新年度に変わって、ぼくは小学6年生になりました。小学校最後の学年です。考えてみると、小学校1~3年の頃に比べると、時間のたちかたが早くなったような気がします。なにか、年をとるごとに時間の流れが早く感じるという法則を聞いたことがありますが、くわしくは忘れました。
エイプリルフールの日についたウソは、会社でお仕事をしているお父さんに電話をかけて、「家が燃えた」「ええっ」「ごめん、エイプリルフール」「俺の仕事中にそんなことで電話をかけるな」と話したくらいです。
そういえば、昨日近所の文房具屋で両面テープとかを買った帰りに、ペンギン駅前でクラスのはなちゃんが、両親の人と自転車をこいでいるところを見かけました。はなちゃんは、実は僕が好きな女の子です。これまで○○ちゃんと書いていましたが、本当ははなちゃんなのです。
はなちゃんの家は三姉妹で、はなちゃんは次女なんだそうです。髪がとても長くて、腰の上くらいまであります。小学3年生の頃から伸ばし続けていると聞いたことがあります。なんでそんなに長い髪がいいのかはわかりません。はなちゃんのお姉ちゃんが髪で遊ぶことがあるらしく、はなちゃんは髪に時々編み込みをしてみたり、ヘアアクセサリーをして学校に来ては、他の女子たちに「かわいー、かわいー」と言われています。
ちょうど仙台は、やっと桜前線が北上してきていて、駅前のロータリーに何本か植えられているソメイヨシノも花をつけていました。はなちゃんが向こうから自転車に乗ってやってくるのを見つけると、僕の心臓は急に、水風船がハレツするみたいに動き出して、心拍数が3倍くらいになりました。
はなちゃんの後ろにはお父さんとお母さんらしい人が、はなちゃんと一緒に自転車をこいでいました。なんとなく僕はうれしくなりました。僕が勇気を出して「はなちゃん」と声をかけると、はなちゃんは目を丸くして口を開けて、驚いたみたいな顔で「けりもくん」と言いました。そのままはなちゃんは僕を通り過ぎて行きました。
そのあと角を曲がるまでに、はなちゃんは2、3度振り返ったので、僕は立ち止まって手を振りました。風が強く吹いて、桜の花びらがひとひら舞いました。ご両親がはなちゃんに何か話しかけているのが見えました。もしかしたら、ちょっとからかい気味に、今の男の子は誰なんだと聞いているのかもしれません。そう想像すると、ぼくはなんだか嬉しい気持ちがしました。
でも、もしかしたら、あまり後ろを振り向いて自転車でコケたら危ないから、はなちゃんに前を向けと注意していただけかもしれません。たぶん、はなちゃんは髪が長いので、振り返ると髪の毛が目のあたりにまとわりついてしまい、視界がふさがれて危険なのです。
どちらが正解なんだろう?
まあいいや。
おわり。
2016年3月13日日曜日
2016年3月13日 西山先生について

ところで、この前もアリエーヌちゃんとアリエルくんと帰り道が一緒になりました。1組のアリエーヌちゃんが、担任の西山先生について、こんな風に話していました。
「西山先生、一回教室から出てったんだよ。知ってた?」
「知らない」とアリエルくんは言いました。ぼくも首を振りました。アリエーヌちゃんはわざとらしく声を抑えて続けます。
「算数の授業のときに、男子たちが西山先生のことイジめてて、黒板に文字書いてるときに「西山ーっ」「葬式ですかーっ」「やば(笑)」「喪中?喪中?年賀状出してないでしょ?」って、声かけるんだよ。でも、前を向くと、みんな静かになるの。先生は無視してるんだけど、鼻とか目とか赤くなってて、ちょっとキョドキョドしてて。先生ちょっとかよわい感じだからかな、男子たち調子に乗っちゃって、背中に消しカスとかクリップとか投げるの。他の子も、笑ってるし。それで、ある男子が「ブス」って言ったのがすごいムカついたっぽくて、振り向いて早口で「外様くん、昼休みお話があるから」ってだけ言うの。
でも外様くんが「は?俺?俺なんかした?」って言い出して。確かに外様くんは西山先生のことをすごいイジめてたんだけど、「でもブスって言ったのは違くね?譜代じゃね?」ってみんなに聞いてみるんだよね、譜代くんは「いや、てかそもそも始めたのお前じゃね(笑)」「は、まじ西山意味わかんねーんだけど、死ね」って言ったら、
「そんなこと言ったらダメでしょ!!!」って西山先生すごい怒り出して、でもそれって、ちょっとズレてるよね、怒り方が。そのまま先生黒板に自習って書いて、教材胸に抱えて出てっちゃた。
「それでどうなったの?」とアリエルくんは聞きました。
「学級委員が謝りに言って、次の授業に普通の顔して戻ってきた。男子たちはさすが静かになってた」
「ふーん」とぼくは言いました。
「次の日は明るい服装になってたな、わかりやすいね」
そんなものかな、とぼくは思いました。
西山先生はふわふわした印象の先生だけど、実は怒ったりするんだなあと思いました。西山先生の怒ったところってどんな感じなんだろう?見たいような気がするけど、あまり見たくない気もします。
まあいいか。
おわり。
2016年2月28日日曜日
2016年2月28日 ハシタカくんはYoutuber?!
くもんの教室の先輩で、同じ学区の中学校の1年生であるハシタカくんは、時々Youtubeに動画を投稿しているそうです。でもハシタカくんは、くもんの先生にはそのことをナイショにしているそうです。ぼくと二人きりになると、よく動画のことを話してくれます。
ハシタカくんはこのように言います。
「いま、学校で動画有名になっちゃってさ、ソフトテニス部の先輩にもめっちゃホメられてさ、今度俺のこと撮影してくれって頼まれてんだよ」
「僕もその動画見たいよ」
「いいからいいから、そんな見るもんじゃないし、恥ずかしいし」
ハシタカくんは手をひらひらさせて、謙遜するように、いたずらっぽい笑顔を見せます。
この前、4時前にくもんの教室に行ったら、ハシタカくんが教室の前で腕組みをして待ち構えていました。右手の人差し指にデジカメの紐をぶら下げています。「ちょっと動画撮るから、カメラマンしてくれない?」
ぼくは、ハシタカくんに協力できるのが嬉しかったので、「いいよ」と言いました。ハシタカくんは「きみは素晴らしい」といって、ポケットから取り出したどんぐりガムを1つ僕にくれました。
ハシタカくんは、ぼくを近所の公園に連れて行きました。それは、くもんの教室から30メートルくらいしか離れていない小さな公園で、Googleマップで調べると「ラムサール第三公園」という名前です。
その公園では、一人の男子が、ブランコで立ちこぎをしていました。髪が長くて、目が隠れており、全身黒いジャージを着ていました。ハシタカくんが「うっす」というと、その男子も「おう」と言って、ブランコからジャンプして飛び出ました。
その男子はそのまま、ブランコの周りを囲んでいる手すりにぶつかりました。「ゴン」と金属の震える音がしました。男子は右足のスネを押さえて地面にうずくまり、黙ってゴロゴロとのたうち回りました。
ぼくは「あっ」と思いましたが、知り合いでもなんでもないので、どうしたらいいかわからず、ハシタカくんが呆然と目を見開いているのを眺めていました。ハシタカくんは「アクシデント、やばいやばい」と言って、「カタハシ大丈夫か」と男子に駆け寄りました。その男子はカタハシというようでした。
カタハシくんは歯を食いしばって、「フー、フー」と息を漏らしていました。ちょっと涙を流しているようです。ハシタカくんは「やばい、骨が折れてる」と、顔面蒼白になりながらつぶやき、ぼくに「カメラ回して、カメラ」と言いました。ぼくは、カメラのカバーを取り外しましたが、録画の仕方がわかりません。
「録画ってどうすればいいの」
「ちょっと貸して」
ハシタカくんはカメラをひったくって何かの操作をして、ぼくにそれを手渡しました。ぼくはカメラを構えました。RECボタンがONになっています。ハシタカくんがしゃべり始めました。
「カタハシ大丈夫か、カタハシっ」
カタハシくんのジャージは、公園の砂にまみれて茶色になっています。涙のあとに砂がついて、目のあたりは黒く汚れています。カタハシくんは声を絞り出すようにして、「まじちょっと待って……」とつぶやきました。
ハシタカくんはカタハシくんのそばに片膝立ちしながら、「ちょっと今、えー、カタハシが負傷しました」と、カメラ目線で、リポーター口調に叫びます。ぼくはそれがおかしくて、つい「ぶっ」と吹き出してしまいました。
「おいちょっとオマエ笑うなし」とハシタカくんはキレ始めました。「ごめん」とぼくは真面目な顔をしました。カタハシくんは相変わらず右足を押さえながら、「おい、ハシタカ、やめろって、カメラ止めて」と、余裕がなさそうにつぶやきます。
ハシタカくんは「これスクープだから」と言って、「おい、カメラ止めるなよ」とぼくに叫びました。「おいっ、カタハシ大丈夫かっ」「いまそんな気分じゃないから」「傷見せてみろ」「やめてって、傷とかないから、打撲だから」「救急車、救急車」
「だまれ」と言って、カタハシくんは横に寝転がりながら、ハシタカくんの左足を強く蹴りました。ハシタカくんは「痛った」と尻餅をつきました。
「撮るなっつってんじゃん。オマエ人の気持ちわかんないわけ」とカタハシくんはハシタカくんをにらみました。ハシタカくんは「オマエの気持ちってなんだよ」と言って、コブシでカタハシくんの右スネを小突きました。
「テメェこの野郎」ついにハシタカくんとカタハシくんは取っ組み合いのケンカを始めてしまいました。ぼくはやばいと思い、カメラを地面に置いて二人に駆け寄りました。
二人は無言で取っ組み合い、お互いの顔に「ブーッ、ブーッ」と唾をかけあっていました。「汚いからやめて!」と僕は二人を引き離そうとしましたが、メガネにまで唾のかかってレンズを白くくもらせたハシタカくんは、「うるせえ」と僕にも唾を吐き掛けました。
「うわっ」と言って、僕は公園の水道に顔を洗いに行きました。二人はケンカをやめ、二人で地面にあぐらをかきながら、お互いの顔は見ず、ハアハアと息を吐いていました。ハシタカくんは泣いているみたいで、鼻を真っ赤にして、鼻水をすすっていました。
僕はくもんに行かなければならないことを思い出しました。カメラを地面から拾って電源を切り、ポケットに入れていたカバーに戻し、ハシタカくんに手渡そうとしました。でも、ハシタカくんは泣いているので、そのそばにカメラをそっと置きました。僕はそのまま教室に行きました。
時間は4時すぎになっていました。みらい先生は答案の丸付けをしながら、「遅いね」と面白くもなさそうにつぶやきました。ぼくは「ごめんなさい」と頭を下げてから、ハシタカくんの名前を出すのはまずいかなと思ったので、「ちょっと友だちと遊んでて」と言いました。先生は「ふーん」と言いました。怒ってはいなさそうだったので、よかったと思いました。
その日の6時前に、ハシタカくんがやってきました。みらい先生のくもんの教室は、3時から6時が幼稚園・小学生の時間、7時から10時が中高生の時間と決まっています。でも、ハシタカくんは早めに教室に来ることが多いのです。
ハシタカくんは、服に少し土ぼこりが付いていましたが、ケロっとした顔をしていました。ぼくは、ハシタカくんにどんな顔を向ければいいかわかりませんでした。先生に答案を提出したあとに、ハシタカくんの座る席に言って、「大丈夫だった?」と小声で聞きました。ハシタカくんも小声で、「大丈夫、ありがと」と言って、右手でぼくの肩を叩きました。ハシタカくんは笑っていましたが、目はまだ赤らんでいるみたいで、かわいそうだなと思いました。
でも、あれからどうなるか気になったので「今度動画見せて」と言ってみました。ハシタカくんは「やだ」と言いました。「でもカメラマンしたじゃん」というと、「あとでどんぐりガム3個あげるから」と言うので、僕は「約束だよ」と言いました。
でも、本当は動画を見てみたいなと思ったので、あとでYoutubeでハシタカくんの動画を探してみました。試しにハシタカくんの本名で検索をかけてみると、なんと、ハシタカくんの本名そのままのYoutubeアカウントを発見してしまいました!なんだか、見ちゃいけないものを見つけてしまった気になりました。
ハシタカくんのアカウントには、10個くらいの動画がアップロードされていました。『【閲覧注意】カマキリのメスの腹を切り裂いてみた!【グロ注意】』(視聴回数314、高評価1、低評価2)とか『私の恋愛遍歴~小学校1年から小学校3年編』(視聴回数421、高評価3、低評価0、コメント3)、『「バケモノの子」感想【細田守はジブリ超え】』(サムネイル画像はバケモノの子パンフレット、視聴回数513、高評価3、低評価0、コメント数3)などがありました。アカウントのチャンネル登録者数は11でした。
ハシタカくんは本当に動画をアップロードしているのです!しかも、視聴回数もかなりあるのです!なんだか、くもんの教室で見せるハシタカくんのイメージが崩れてしまうのが怖かったので、僕は動画は見ませんでしたし、ハシタカくんに話してしまうつもりもありませんが、ハシタカくんはすごいなと思いました。
でも、今回撮影しようとしたビデオが何なのかは、よくわかりませんでした。ぼくが撮った動画も見つけられませんでした。もしかしたら、対談の形式で、恋愛遍歴の小学4年生~小学6年生編を作ろうとしていたのかもしれません。
ハシタカくんには才能があるなと思いましたが、でも、同時になんか悔しいなと思い、胸が痛みました。
まあいいや。
おわり。
2016年2月21日日曜日
2016年2月21日 アリエルくんとアリエーヌちゃんの帰り道
この前、学校の帰り道にアリエルくんとアリエーヌちゃんと一緒になりました。いつも一緒に帰ることはありませんが、今日みたいに偶然会うと、なんとなく二人で帰るみたいです。
アリエルくんは、緑色のランドセルの上に、薄緑色のナップザックを背負っています。中には体操服が入っています。また、今週給食当番で、今日は金曜日だったので、今、アリエルくんの右腕には、給食着袋の細いひもがにぎられています。一方アリエーヌちゃんは、ピンク色のランドセルを背負って、右手には四角い手提げ鞄を持っています。そのバックからは、リコーダーが飛び出しているのが見えます。高学年になると、リコーダーはあまり使いませんが、アリエーヌちゃんはたぶん、3学期の終わりに行われる、学校の保護者発表会の出し物で、リコーダーを使うのかもしれません。
アリエーヌちゃんの頭の中には、いつも他人への不満がうずまいているようです。ぼくは、二人の会話を聞いていました。
「うちのクラスの女子はファッションに関心のない子多すぎ。他の子が何で判断されるのかって見た目じゃん。髪の毛とかボサボサなの理解できない。」
「うん」
「あと男子はバカ多すぎ。先生はいつもニコニコしてるだけで不良の子とかぜんぜんしれないからクラス学級崩壊ぎみだし、ほんとあんなこと通うのやだ」
「ふうん」
アリエーヌちゃんの担任は若い女の先生で、全校集会とか学校の行事とかで会います。背が高くて、痩せていて、いつも黒い服を着ています。ちょっと神経質そうで、でも穏やかで優しそうです。アリエーヌちゃんがその先生の悪口を言うので、びっくりしました。
アリエルくんはただアリエーヌちゃんの話にうんうん頷いています。でも、あまりアリエーヌちゃんの話に興味がありそうではありません。
「見て見て、ミサンガ」アリエーヌちゃんはぼくに左の手首を突き出しました。青や、赤や緑のカラフルなミサンガが、5本ぐらいグルグルと付けられています。すごい量です。「どう?」
「すっげー。ぜんぶ、違うお願いごとをかけてるの?それとも、1つの強いお願いごとがあるの?」
「違う願い事かけてるよ」アリエルくんが代わりに答えました。「絶対多すぎだよ」
「アリエル関係ないじゃん」と、アリエーヌちゃんはアリエルくんをにらみつけました。本人は、目の前で青から赤に変わる歩道の信号を見つめています。
「家でも仲いいんだろうね」
「えっ、ありえない」アリエーヌちゃんはすぐに首を振りました。アリエルくんはうつむいて黙っています。その時、後ろからアリエーヌちゃんの友達たちがやってきました。「エーヌちゃん♡」「あっチホちゃん♡」アリエーヌちゃんはぼくたちには何も言わずそのままグループに入り、信号は渡らず話しながらどこかへ行ってしまいました。
ぼくとアリエル君二人だけになりました。信号が青に変わったので歩き始めました。あまり話すこともありません。
「アリエーヌちゃんは家でもおしゃべりなの?」
「あいつ外だとテンション高い」とアリエルくんは言いました。「マンガ読んだりゲームしたりしてる、普通だよ」
「ふうん」そういうものなのかなと思いました。
しばらく進むとイルカ公園の前でアリエルくんが、「ここで曲がる」というので、「じゃあバイバイ」といって別れました。
二人が家の中で一体どんな感じなのか、あまり想像がつきませんでした。
まあいいか。
おわり。
2016年2月14日日曜日
2016年2月14日 ところでブラックデーをご存知ですか。
今日はバレンタイデーです。でも日曜日なので、学校でチョコが出回るのは明日になるでしょう。でも、この前の金曜日にも、チョコを配っている女子はいたりしました。
ぼくはチョコを3つもらいました。まず今日、おかあさんから1つ、神奈川に住むおばあちゃんから宅配便で送られてきたのが1つ、木曜日にくもんの先生から生徒全員に配られたチョコが1つです。
ところで、ぼくには好きな女の子がいます。名前は恥ずかしいので言えません。〇〇ちゃん、つまりまるちゃんと呼びましょう。まるまるちゃんは金曜日の朝から、友達と友チョコをたくさん交換しあっていました。ぼくはそれを横目で見つつ、まるまるちゃんがこっちに来ないかなと期待していたのです。
でもまるちゃんは他の男の子にチョコあげたみたいです。その男の子は山形くんと言って、サッカーがうまくて背が高くて、頭が良くて話しがうまくて、人気者なのです。田山くんや山田くんとも仲がいいのです。義理チョコらしいのですが、ぼくはショックでした。ちょっと安易すぎるんじゃないかなと思いました。
でも、あとで風の噂に聞いた話だと、まるまるちゃんは他に、なんだか他の学校の幼馴染の男の子に本命のチョコをあげるんだと聞きました。まるまるちゃんは安易じゃなかったんだ。やられたな、とぼくは思いました。
それにしても、バレンタインデーなんて、外国の習慣なのに、みんなこぞって浮かれちゃって、ちょっと単純すぎるんじゃないかなともぼくは思いました。
でも、それはぼくが本命チョコをもらっていないのがいけないのであり、もしももらったら、バレンタインデーは最高という感じになるでしょう。
ところで、この前の木曜日にくもんの先生が言っていたのには、韓国も、バレンタインデーは女の人が男の人にチョコを贈る日なのですが、韓国には、バレンタインデーやホワイトデーに縁のなかった人たちが、4月14日にみんなでジャージャー麺を食べたり、ブラックコーヒーを飲んだりする、「ブラックデー」という日があるんだそうです。くもんの先生は、私は今配ったから縁あるけどねと言ってケラケラ笑っていました。
ブラックデーが日本で流行ったら面白そうだな。
おわり。
ぼくはチョコを3つもらいました。まず今日、おかあさんから1つ、神奈川に住むおばあちゃんから宅配便で送られてきたのが1つ、木曜日にくもんの先生から生徒全員に配られたチョコが1つです。
ところで、ぼくには好きな女の子がいます。名前は恥ずかしいので言えません。〇〇ちゃん、つまりまるちゃんと呼びましょう。まるまるちゃんは金曜日の朝から、友達と友チョコをたくさん交換しあっていました。ぼくはそれを横目で見つつ、まるまるちゃんがこっちに来ないかなと期待していたのです。
でもまるちゃんは他の男の子にチョコあげたみたいです。その男の子は山形くんと言って、サッカーがうまくて背が高くて、頭が良くて話しがうまくて、人気者なのです。田山くんや山田くんとも仲がいいのです。義理チョコらしいのですが、ぼくはショックでした。ちょっと安易すぎるんじゃないかなと思いました。
でも、あとで風の噂に聞いた話だと、まるまるちゃんは他に、なんだか他の学校の幼馴染の男の子に本命のチョコをあげるんだと聞きました。まるまるちゃんは安易じゃなかったんだ。やられたな、とぼくは思いました。
それにしても、バレンタインデーなんて、外国の習慣なのに、みんなこぞって浮かれちゃって、ちょっと単純すぎるんじゃないかなともぼくは思いました。
でも、それはぼくが本命チョコをもらっていないのがいけないのであり、もしももらったら、バレンタインデーは最高という感じになるでしょう。
ところで、この前の木曜日にくもんの先生が言っていたのには、韓国も、バレンタインデーは女の人が男の人にチョコを贈る日なのですが、韓国には、バレンタインデーやホワイトデーに縁のなかった人たちが、4月14日にみんなでジャージャー麺を食べたり、ブラックコーヒーを飲んだりする、「ブラックデー」という日があるんだそうです。くもんの先生は、私は今配ったから縁あるけどねと言ってケラケラ笑っていました。
ブラックデーが日本で流行ったら面白そうだな。
おわり。
2016年2月7日日曜日
2016年2月7日 最後は女子と過ごしたい?
この前の話です。その日は雪がちらほらと降っていて、積雪もあり、くもりでした。僕は、いつものように学校に行きました。3時間目の授業は体育でした。ぼくは、体操着に着替えて、赤白帽をかぶって、友達と一緒に体育館に行きました。
体育館は、とても壁が薄いです。穴が開いてしまいそうなほどだと思います。体育館は、なんだが木材と汗の混じったような、すえた臭いがします。
でも、津波の時に、体育館は果たして流されたのでしょうか。よくテレビなどで、家が流されている、ひどい様子を見たことがあります。だったら、体育館も同じように、プカプカ水に浮いていても、おかしくはないのではないでしょうか。
実際に調べてみると、あまりそういうことはないみたいでした。でも、きっと条件が重なれば、体育館は浮くのではないでしょうか。まず、体育館は、他の部分と繋がっていてはいけません。コンクリートで通路とかとつながっていたり、あとは基盤の部分が地面と固定されていたりすると、体育館は浮かないでしょう。また、体育館の扉や窓は締め切って、隙間をガムテープなどで閉じるなどして、水の入ってこないようにする必要があるでしょう。こうすることで、体育館は水に浮かぶはずです。
体育館に、僕たち1クラスぶんがまるまる取り残されたまま漂流してしまったら、一体どうなるだろうと考えました。まず、仲のよい人同士が固まって、それぞれに基地のようなものを作るでしょう。多分、暖房やマットの奪い合いになると思います。タニシ先生はみんなを束ねようとしますが、たぶん女子にキモいといわれて、しょうがないので良い子の多いおとなしめの男子のグループに入りつつ、みんなのことを見守るでしょう。
そのあとは、飢えとの戦いになるでしょう。男子たちは気が立ち、お互いに陣地を主張して争いはじめます。多分、クラスの体育に強い男子と、きゃぴきゃぴとした女子たちがつるんで、リーダー的な権力を振るい、バスケなどをして遊ぶとともに、用具室などの、居心地の良い場所を占領するでしょう。どちらかというとおとなしい男子たちと女子たちは、それぞれ独立を保ち、ステージ裏や、2階の通路などにそれぞれの居場所を作り、おしゃべりなどをしているでしょう。
しかし、だんだん寒さや飢えが厳しくなってくると、みんな遊んだりする元気が無くなってきて、最後には、全員が用具室で縮こまって、暖房にあたりながら、静かに最後の時を待つのではないでしょうか。
そこまで考えましたが、あまり考えても仕方がないので、もうやめることにします。
でも、もし本当に死んでしまうのだとしたら、やっぱりぼくは、好きな女子と一緒にすごいしたいなと思います。みんな、そう思うのではないでしょうか。そんなこともないのかな。
まあいいや。
おわり。
登録:
投稿 (Atom)





