2016年4月10日日曜日

4月10日 タニシ先生の自撮り棒で集合写真を撮る

この前の金曜日に始業式がありました。その日は晴れで、ぼくはウキウキしながら学校に行きました。これから入学式に出るのでしょう、小さな体にブレザーを着てランドセルを背負って、おめかしした両親と歩いていく新1年生をたくさん見かけました。こうやって新しい子どもたちが学校に入学していくのかと考えると、なんだか不思議な気持ちです。自分もずっと昔はこのようにして両親と歩いていたのかなと思ったけれど、詳しくはもう覚えてもいません。

ちょうど桜が満開で、ぼくはその花びらを掴んだり、口の中に入れたりしながらいつも通りの時間に校門をくぐりました。夏休みに比べると休みの期間は短いので、そんなに懐かしい感じはしませんが、校舎の中は新しい学年になって浮足立った生徒たちでなんだかわくわくする気がします。

6年生になったら教室も変わります。ちょうど昇降口の所で知り合いの1組の戸塚くんに出くわしたので、いつもだったらあまり話さないかもしれないけれど、やっぱり新学期初日ということもあって何が起きるかわからないので、春休み中にしたことを話しながら、6年生の教室のところまで行きました。戸塚くんは家族でTDLに行ったらしく、ランドセルのホルダーにドナルドダックのキーホルダーをつけていました。

まず、戸塚くんが6年1組の教室の扉の前に貼り出してある、クラス名簿と席順の書いてあるプリントを見たので、ぼくは後ろでずっと見ていると、戸塚くんは笑いながら「アッあった」と言って、そのままヒラヒラ手を振りながら教室へ消えていったので、ぼくも「ばいばい」と手を振って別れました。1組の教室は、全然普段関わらない人たちばかりなので、クラス替えというか、メンバー替えはほとんどないんだなと思いました。

次に、ぼくは6年2組の扉の前に行きました。クラス名簿を見ると、出席番号順に生徒の名前がのっていて、ぼくの名前もありました。やっぱり、クラスのメンバーは5年生の頃から変わっていないようです。座席は、年度はじめなのでちゃんと出席番号順に並んでいます。後ろから教室に入ると、中にはもう半分くらいのクラスメイトがいます。みんな、他の友達と話したり、席に座ってノートや本を開いていたり、後ろのロッカーにみんなで座っていたり、机にうつぶせて寝ていたりと、様々です。

前には桃山くんがいます。桃山くんは後ろの学級図書にある本を読んでいました。井伏鱒二の『黒い雨』です。ぼくもちらっと読んだことがあります。桃山くんのつむじのあたりをボーッと眺めていると、やがて前の扉から、のそっとタニシ先生が入ってきました。みんなちょっと静かになって、ロッカーで喋っていた人たちも席に戻ったみたいです。

「あー、いいよ今日は礼とかは。めんどくさいからね。ところで、桜満開だよね。きれいだなー。私も通勤中、車を運転しながらそっちに目がいっちゃってね、危うく路肩にはみ出して新入生ひいちゃうんじゃないかって、あはは。みんな、未来への希望にあふれてるかな?それとも、新学期が始まっちゃってゆううつかな?クラス替えがないからね、あまり実感はないかもだけど、私達は最高学年です。下級生のお手本になるように胸張っていこー」

みんな「はあーい」と気乗りのしないような返事をしました。そのあとタニシ先生は今日の予定や、細かな連絡をしたあと、1時間目は大掃除の時間で、ぼくは廊下に乾雑巾をかけたりしました。2時間目は学活で、6年生になって使う教科書が配られて名前を書いたり、身長にあわない椅子や机を交換したり、ロッカーに自分の名前を書いたりしました。3時間目は学年集会です。体育館で、校長先生のお話を聞いたりしました。1組担任の西山先生も何か話していました。

そして今日は終わりです。帰りの会が終わってみんながランドセルを背負い出してから、タニシ先生が、「ところで記念撮影しよう」といって、バックから取り出した棒の先に自分のスマホを取り付けました。「自撮り棒だ」とみんなはちょっとザワザワしました。ぼくは、学校のカメラじゃなくて自分の私物で写真撮るのは公私混同じゃないかな?と思いました。でも、わぁー、といった感じで、みんなはタニシ先生のそばに集まります。女子が多いようです。

ぼくがはたから見ていると、なんと、ぼくの好きなはなちゃんもタニシ先生の横にくっついているではありませんか!楽しそうに笑っています。いけないと思って、ぼくも後ろの方から先生に近寄りました。「そんなに全員は撮れないよ〜」と言って、タニシ先生は手を目一杯伸ばして、写真を撮ろうとしました。その時、タニシ先生の後ろにいた女子が、「シャシャが写真に入らなそうだから、前に出るから待って」と言いました。タニシ先生は振り向きました。

その子は身体の小さな子で、佐々山さんと言います。佐々山さんが出てくる間、みんなは黙りこくっていました。ぼくは、その瞬間がとてもイヤでした。例えば、もしも佐々山さんがもたついてずっと出てこられなかったら、きっと誰かが「はやくしろよ」と声を上げるかもしれないのです。それが起きる可能性があるのが、なんだかジゴクへの扉が開いたみたいに思えたのです。

佐々山さんはすぐにひょこっと出てきました。タニシ先生は、「じゃ、はいチーズ」と言って写真を3枚撮りました。3枚目はみんなで変顔をしました。楽しくてけらけら笑いあいました。

よかったよかった。


おしまい。

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