2015年8月6日木曜日

2015ねん8がつ5にち 仙台七夕花火祭り

 ぼくはきょう、ともだちの山田くんと田山くんといっしょに、仙台七夕花火祭りにいきました。



 ゆうがたごろに山田くんから「花火行かね笑 きみおごりね笑」とラインがきて、おごるのはやだなと思ったけど、山田くんも田山君もイケメンでかっこいいので、二人と花火に行けるのはとてもほこらしいことだし、もしかしたら、ふたりのおこぼれにあずかって、ぼくもクラスのじょしと仲良くできるかもしれないぞ、ウシシ、と思ったので、「いいよ。」と返事をしました。

 ぼーっとしていたら、いえのドアがどんどん叩かれたので、二人がきたんだなと思い、このまえお父さんに買ってもらった、真新しくてぴかぴかの野球帽を被って、うきうきして外に出たら、田山くんがドアのまえにいて「よお」といいました。ぼくは口の中でなにかごにょごにょ言いましたが、なんだかうまく言葉になりませんでした。山田くんは自転車にまたがっていましたが、「帽子かっこいいじゃん」と言ってくれたので、ありがとうと口の中でごにょごにょ言って、うつむいてにっこりしました。山田くんは「チャリとめさせてもらうね」といってぼくの家の庭に自転車を停めました。そして田山くんと山田くんが二人で街中へあるいていき、ぼくはふたりの間から顔をだすようにして、そのうしろについていきました。

 なだらかな坂道をのぼって、とうほくだいがくの川内キャンパスにつきました。花火の打ち上げ場所は、そのすぐ近くの川内はぎホールの敷地内なので、ここからだと、すく近くで花火がみれるそうです。とうほくだいがくは、すごく頭のいい大学なので、インテリ特有のプライドの高さと、汚れたものを一切排除する上品さがキャンパスからにじみ出ていて、山田くんも田山くんも、ちょっときんちょうした面持ちにみえました。

 山田くんと田山くんは二人で相談していました。山田くんはスマホをいじくって、なにか調べていました。ぼくにはよくわからなかったけど、キャンパス内は大学関係者以外立ち入り禁止と書いてあるし、屋台もないから、下の観覧会場に行こうとはなしているようでした。

 田山くんがぼくに、「花火の打ち上げ現場に乱入してこいよ」といいました。ぼくはだまっていました。山田くんが「はやくいけよ」といってぼくの頭をバンと叩きました。全然いたくなかったのでぼくはへいきでしたが、なんだか胸が苦しくなって、なみだがでそうになりました。「没収」といって、山田くんがぼくの野球帽をヒョイと取りあげました。ぼくは手をのばしましたが、山田くんは体は細いけど力が強いのでとりかえせません。「〇〇ちゃんみてるよ」と山田くんはいいました。
 
 〇〇ちゃんはぼくが好きな女の子のことです。ぼくはそのことを二人に、ずっとからかわれています。〇〇ちゃんは、ぼくによく話しかけてくれて、かわいくて元気で活発な女の子なので、ぼくは〇〇ちゃんのことが好きです。でも〇〇ちゃんは、山田くんとも仲が良いです。〇〇ちゃんはぼくと話すときは、よく「かわいい、かわいい」といってくれるので、ぼくは顔を真っ赤にします。でも山田くんと話すときは、ちょっとおとなっぽくなって、山田くんも〇〇ちゃんを名前だけで呼ぶし、「なんだか夫婦みたいだなあ」と思うことがあります。でも、山田くんには「かわいい」といわないので、〇〇ちゃんは山田くんのことは友達みたいに思っていて、ほんとうに好きなのはぼくのことだけど、恥ずかしくて言えないのかな、とおもいます。

 「ここで男をみせろ」と田山くんはいいました。山田くんも「ここでやれば〇〇ちゃんきみのこと好きになるよ」といいます。〇〇ちゃんはここにいないから、二人の言ってることはでたらめです。でも、この帽子はお父さんに買ってもらったとても大切なものだから、ぜったいに返してもらわなきゃいけません。どうすれば帽子を取り返せるかわからなくて、二人が怖かったので、ようしと思って、警備員さんたちのたくさんいる、打ち上げ場所のほうへ向かっていったら、田山くんが「馬鹿、やめろ」といって、半笑いしながらぼくを腕を強く掴んで引き戻しました。山田くんは「ほんとに行かせるわけないじゃん。あーあ、〇〇ちゃんがかなしむ」といって、ぼくの帽子をわざわざ地べたにペタンと叩きつけました。

 ぼくはその野球帽をみると全身が粟立つ思いがしました。僕のことを殴ったり叩いたりしても構わないし、どんなに僕のことをからかったり、悪く言ったりしても耐えられるけど、僕のお父さんが買ってくれた帽子をこのように扱われるのは、ほんとうに悔しくて、涙がでました。ぼくをいじめるのに、〇〇ちゃんを引き合いに出すのも、〇〇ちゃんが迷惑だからやめろとおもいました。

 ぼくが二人にいじめられていることは、自分でわかっているけど、ぼくはそのことで両親を悲しませたくないから、家ではなんでもないように振る舞っているのです。でも僕の帽子は、僕のお父さんの思いが詰まっているから、その帽子を足蹴に扱うことは、ぼくのお父さんを侮辱していることなります。山田くんは、そのことの意味をわかっているのでしょうか。〇〇ちゃんが、本当は山田くんのことを好きなのも、なんとなくわかるけど、ぼくをいじめるのに、〇〇ちゃんを引き合いに出すのは、〇〇ちゃんの名前を汚していることにならないでしょうか?山田くんは〇〇ちゃんにたいして申し訳ないという気持ちはおこらないのでしょうか?

 でも、いっぽうで、山田くんは田山くんにとても優しくて、田山くんにとっての一番の親友は山田くんだし、山田くんはあまりともだちのいないぼくのことをよく遊びにさそってくれるし、遠足とか、学校の旅行とかの班分けでも、ぼくを仲間にいれてくれます。山田くんはサッカーが上手で、下手なぼくに、ドリブルのしかたやボールの蹴り方を教えてくれるし、いっしょにサッカー教室に行こうとさそってくれたりします。バレンタインデーには、山田くんは女子からチョコレートとか手紙とかをたくさんもらうし、おこぼれでぼくも友チョコをもらえます。山田くんのお母さんは綺麗な格好をしていて美人で優しくて、いえに遊びにいくとおしゃれなグラスに入った飲み物をくれるし、いつも笑顔でぼくにはなしかけてくれます。ともだち何人かで映画に連れて行ってもらったこともあります(ベイマックスをみました)。
 
 それに、〇〇ちゃんは山田くんといると、いつもとても嬉しそうにニコニコしています。

 山田くんはぼくをいじめるけど、いいことも沢山してくれるし、山田くんの周りのひとはみんないい人なんです。ぼくは山田くんにはぜったいにかなわないと思うし、山田くんのことを考えると吐き気がして頭が真っ白になってなにも考えられなくなるけれど、同時に尊敬してもいるのです。よい山田くんとよくない山田くんがぼくのなかに混在して、ぼくはどうすればいいのかわからないです。

 けっきょく、ぼくは山田くんが投げ捨てた野球帽をかぶり(帽子はほとんどきれいなままでした)、丘を下って観覧会場で三人で花火をみました。田山くんはスマホでぼくと山田くんのしゃしんを撮ってくれて、あとでLINEでぼくにおくってくれました。ぼくはそれをみると、胸のつまるような気持ちになると同時に、どうしたって、山田くんと2人で写真に映っていることの優越感と誇らしさをかんじてしまうのでした。

 おわり。

0 件のコメント:

コメントを投稿