2016年4月24日日曜日

4月24日 グループワーク!

総合的な学習の時間で、グループワークの課題が出ています。テーマは「仙台市の神社やお寺の歴史を調べてまとめなさい」というやつです。クラスが全部で6つの班に分かれて、調べたことを、もぞう紙一枚にまとめて、2ヶ月後に発表しなければなりません。めんどくさいです。

タニシ先生は、「神主さんや、住職さんにインタビューをしてください。行きたい神社や、お寺を決めたら、ぼくにおしえてちょんまげ。・・・ま、でも、勝手に行っていいよ。君たち6年だから、大丈夫だよね。まあ、わかるよね?ご迷惑だけはかけちゃだけだから。ではがんばって」とだけ言って、教卓の椅子にふんぞり返って昼寝しはじめました。

たぶん、子どもたちが質問にきてくれれば、やっぱり、神主さんとか、住職さんは喜ぶと思うし、たぶん、ネットや本やテレビとかではわからないよーな話を聞けると思いますが、僕は、もともと神社やお寺に興味がないから、あんまりお話を聞きたいと思いません。みんなは、興味があるでしょうか?

まだ席替えをしないで、出席番号順のまま班を組んだので、僕たち5班は、いっつも見知っているようなメンバーになりました。男子は、目白くん、桃山くん、僕。女子は、目黒さん、山田さん、矢板さんです。

僕たちは、机を合わせて、発表の話し合いをすることにしました。桃山くんが、自由帳を取り出して、「じゃあ、作戦会議のメモをするよ」と言って、新しいページに鉛筆で「総合の発表 4/20(水)」と書き込みました。作戦会議と名前をつけて、みんなを盛り上げるところは、桃山くんのすごいところです。でも僕は、なんだかあほらしいな、作戦会議なんていうけれど、僕たちはいったい何と戦っているのかな?と思いました。

目白くんは、腕を組んで、ぼーっとした顔をして、黙っています。目白くんは、運動神経がとてもよくて、5年の冬の陸上大会で、100m走を14秒台で走って、県大会で表彰されたらしいです。あとは、ポケモンなどのゲームに詳しいのですが、グループ活動にはあまり興味がない様子です。

矢板さんも、うつむいて何も話しません。矢板さんはどちらかというとおとなしい子で、いつの間にか学校を早退していたりします。本を読んだりするのが好きらしくて、休み時間には、図書館で見かけることがとても多いです。山田さんと仲が良くて、二人で手紙を交換し合っているみたいです。

僕は、「神社とお寺って、こんがらがってよく分からないから、その違いについて書こうよ」と言いました。それだったら、図書室で、ちゃっちゃと調べ物をすればいいだけだから、楽だと思ったのです。桃山くんは、神社とお寺の違い、とノートにメモをしました。山田さんは、「ちか子のおうちってお寺じゃん。お父さんにインタビューさせてもらえばいいんじゃん!」と言いました。ちか子ちゃんとは、目黒さんの下の名前です。目黒さんは、鼻にしわを寄せて、「あー、あいつか」と言いました。『あいつ』ってお父さんのことなのかな?と僕は思いました。

「エエッ、目黒さんちってお寺なの、知らなかったーっ」桃山くんがカッと目を見開き、おでこに手をやり、椅子からのけぞりながら、叫びました。「万仏寺だよ。だって山田家のお墓そこにあるもん」と山田さんはニコニコしながら答えました。目黒さんは、困ったような顔をして、「話聞けるかどうかは、頼んでみないと、わかんないから・・・」と言いました。歯切れが悪いです。みんなと目線が合いません。

「じゃあもう、発表できたじゃん」目白くんが言いました。矢板さんは、「ちか子ちゃん大丈夫?」と聞いています。桃山くんは「じゃあ、目黒さんのお父さんに話が聞けるかどうか、目黒さん、聞いてもらえる?」「・・・わかった」ちか子ちゃんはちょっとバツが悪そうにうなずきました。山田さんは「わーありがとー!いやだったらごめんね」と話しました。目黒さんはうわの空で「大丈夫だよー」と言いました。桃山くんは、目黒さんのお父さんにインタビュー、とメモしました。

「じゃあ、山田さんと矢板さんは絵がうまいから、イラスト担当だね」と桃山くんは言いました。僕は、ほんとは自分がイラストを描きたいけど、山田さんはマンガを描いたりしていて、絵がうまいキャラだし、実際に絵がうまいので、仕方がないやと思って、黙っていました。「えーっ、あたしやだーっ!」と、山田さんは最悪そうな顔をして答えました。でも本当は嬉しいのです。「一緒にやろー!」と矢板さんと両手の平を合わせて組み、矢板さんは「あはは」と苦笑いしてました。

「じゃあ、おれたちは文章担当で」と、桃山くんは僕と目白くんを見て言いました。僕たちはあいまいに「わかった」と言いました。だいたい話がまとまったので、図書室に行く班もありましたが、僕たちは無駄話をしておわりました。きっと、図書室に行った班は、神社とかお寺に訪問するアテがないから、通りいっぺんの調べ物でお茶を濁そうとしているに決まってます。

それにしても、目黒さんがなんだかきまりが悪そうだったのはなんでだろう?

まあいいや。


おわり。

2016年4月17日日曜日

4月17日 はなちゃんがドッジボールしてた

この前の水曜日にテストがありました。仙台市標準学力検査というものです。午前中の時間を全部使って、国語と算数、理科、社会のテストを解きました。生活のアンケートにも答えました。これで、仙台市内の小中学校の学力などを測るのだそうです。タニシ先生は特に何も言わずにテストを配っていました。

僕は一生懸命テストを解くつもりでしたが、なんだか、集中しなければならない時に限って、どうでもいいことばかりが思いつくのです。リビングのカーテンレースを水で洗ったらどれくらい水が汚くなるんだろうとか、今日は、昨日に比べて何分くらい陽が伸びているんだろうとか、ドクダミ茶を作るときは葉っぱを煮ればいいのか、それとも乾燥させてお茶っぱにしてせんじたほうがいいのか、みたいなことを考えてしまうのです。テストを解くよりも、そういう疑問を解決してみたほうが、よっぽど役に立つんじゃないかな?と考えて、気分は上の空になってしまいます。

僕の学校のテストは、80点くらいが普通です。100点はあまり取ったことがありません。それに比べて、山田くんはとても成績がよいです。100点とか、95点ばかりを取っているようです。田山くんは、あまり成績は良くないようです。この前返されたテストを折り紙して紙コップを作り、これを採尿に使おうと言って、みんな笑っていました。実は、僕もちょっと笑ってしまいました。

タニシ先生はテストを返すとき、それがよい成績だと、結構人前でそれをほめます。フィードバックが大事だというのです。つまり、成績のよい生徒のことをほめれば、その生徒は嬉しくなるので、点数がもっと伸びていくのです。たしかに、タニシ先生の言っていることは正しいかもしれませんが、やり方が良くないと思います。誰かがよい成績を取っていると、「ぼくはこの生徒を認めているよ」というふうに、おうような顔をして、「よくできたね」と生徒にテストを渡すのです。でも、点数が良くない生徒には、ちょっと難しい顔をして、テストを手渡すのです。テストの良くない生徒はかわいそうですよね。でも、自分も、もっと勉強を頑張ろうと思ってしまうし、やっぱり嫌だけど、タニシ先生は正しいのかもしれません。

ところで、テストが終わって昼休みに、はなちゃんが校庭でドッジボールをしているのを見つけました。1組と2組合同の女子が中心となっていたので、仲間には入りませんでした。はなちゃんは誰かれ構わず、アサシンの顔をして全力でボールをぶつけます。かわいかったので、校庭を歩きながらずっと一人で見ていたら、後ろから肩を叩かれて、誰かと思って後ろを振り返ったら桃山くんでした。桃山くんはにやにや人懐っこく笑って、「ニシザワハナのこと好きでしょ」と言いました。

バレたか。心臓が止まるかと思いました。

まあいいか。


おわり。

2016年4月10日日曜日

4月10日 タニシ先生の自撮り棒で集合写真を撮る

この前の金曜日に始業式がありました。その日は晴れで、ぼくはウキウキしながら学校に行きました。これから入学式に出るのでしょう、小さな体にブレザーを着てランドセルを背負って、おめかしした両親と歩いていく新1年生をたくさん見かけました。こうやって新しい子どもたちが学校に入学していくのかと考えると、なんだか不思議な気持ちです。自分もずっと昔はこのようにして両親と歩いていたのかなと思ったけれど、詳しくはもう覚えてもいません。

ちょうど桜が満開で、ぼくはその花びらを掴んだり、口の中に入れたりしながらいつも通りの時間に校門をくぐりました。夏休みに比べると休みの期間は短いので、そんなに懐かしい感じはしませんが、校舎の中は新しい学年になって浮足立った生徒たちでなんだかわくわくする気がします。

6年生になったら教室も変わります。ちょうど昇降口の所で知り合いの1組の戸塚くんに出くわしたので、いつもだったらあまり話さないかもしれないけれど、やっぱり新学期初日ということもあって何が起きるかわからないので、春休み中にしたことを話しながら、6年生の教室のところまで行きました。戸塚くんは家族でTDLに行ったらしく、ランドセルのホルダーにドナルドダックのキーホルダーをつけていました。

まず、戸塚くんが6年1組の教室の扉の前に貼り出してある、クラス名簿と席順の書いてあるプリントを見たので、ぼくは後ろでずっと見ていると、戸塚くんは笑いながら「アッあった」と言って、そのままヒラヒラ手を振りながら教室へ消えていったので、ぼくも「ばいばい」と手を振って別れました。1組の教室は、全然普段関わらない人たちばかりなので、クラス替えというか、メンバー替えはほとんどないんだなと思いました。

次に、ぼくは6年2組の扉の前に行きました。クラス名簿を見ると、出席番号順に生徒の名前がのっていて、ぼくの名前もありました。やっぱり、クラスのメンバーは5年生の頃から変わっていないようです。座席は、年度はじめなのでちゃんと出席番号順に並んでいます。後ろから教室に入ると、中にはもう半分くらいのクラスメイトがいます。みんな、他の友達と話したり、席に座ってノートや本を開いていたり、後ろのロッカーにみんなで座っていたり、机にうつぶせて寝ていたりと、様々です。

前には桃山くんがいます。桃山くんは後ろの学級図書にある本を読んでいました。井伏鱒二の『黒い雨』です。ぼくもちらっと読んだことがあります。桃山くんのつむじのあたりをボーッと眺めていると、やがて前の扉から、のそっとタニシ先生が入ってきました。みんなちょっと静かになって、ロッカーで喋っていた人たちも席に戻ったみたいです。

「あー、いいよ今日は礼とかは。めんどくさいからね。ところで、桜満開だよね。きれいだなー。私も通勤中、車を運転しながらそっちに目がいっちゃってね、危うく路肩にはみ出して新入生ひいちゃうんじゃないかって、あはは。みんな、未来への希望にあふれてるかな?それとも、新学期が始まっちゃってゆううつかな?クラス替えがないからね、あまり実感はないかもだけど、私達は最高学年です。下級生のお手本になるように胸張っていこー」

みんな「はあーい」と気乗りのしないような返事をしました。そのあとタニシ先生は今日の予定や、細かな連絡をしたあと、1時間目は大掃除の時間で、ぼくは廊下に乾雑巾をかけたりしました。2時間目は学活で、6年生になって使う教科書が配られて名前を書いたり、身長にあわない椅子や机を交換したり、ロッカーに自分の名前を書いたりしました。3時間目は学年集会です。体育館で、校長先生のお話を聞いたりしました。1組担任の西山先生も何か話していました。

そして今日は終わりです。帰りの会が終わってみんながランドセルを背負い出してから、タニシ先生が、「ところで記念撮影しよう」といって、バックから取り出した棒の先に自分のスマホを取り付けました。「自撮り棒だ」とみんなはちょっとザワザワしました。ぼくは、学校のカメラじゃなくて自分の私物で写真撮るのは公私混同じゃないかな?と思いました。でも、わぁー、といった感じで、みんなはタニシ先生のそばに集まります。女子が多いようです。

ぼくがはたから見ていると、なんと、ぼくの好きなはなちゃんもタニシ先生の横にくっついているではありませんか!楽しそうに笑っています。いけないと思って、ぼくも後ろの方から先生に近寄りました。「そんなに全員は撮れないよ〜」と言って、タニシ先生は手を目一杯伸ばして、写真を撮ろうとしました。その時、タニシ先生の後ろにいた女子が、「シャシャが写真に入らなそうだから、前に出るから待って」と言いました。タニシ先生は振り向きました。

その子は身体の小さな子で、佐々山さんと言います。佐々山さんが出てくる間、みんなは黙りこくっていました。ぼくは、その瞬間がとてもイヤでした。例えば、もしも佐々山さんがもたついてずっと出てこられなかったら、きっと誰かが「はやくしろよ」と声を上げるかもしれないのです。それが起きる可能性があるのが、なんだかジゴクへの扉が開いたみたいに思えたのです。

佐々山さんはすぐにひょこっと出てきました。タニシ先生は、「じゃ、はいチーズ」と言って写真を3枚撮りました。3枚目はみんなで変顔をしました。楽しくてけらけら笑いあいました。

よかったよかった。


おしまい。

2016年4月3日日曜日

2016年4月3日 ソメイヨシノとはなちゃん

春休みに入ってだいぶ時間がたちました。この前の金曜日に修了式がありました。それからは、いつも通り公文の教室があって、あとは家で遊んだり、外に遊びに行ったりしています。家ではゲームをしているか、テレビを見ているか、マンガを読んでいるかパソコンをしているか、本を読んでいたりします。毎日ぼけーっとしています。

一度、自転車で広瀬川をたどって、海の方まで行ってみようと思いました。でも、外に出たのが夕方の3時くらいだったので、長町を越えて、ビルがたくさん建っているのを眺めながら河川敷をずっと走っていると、名取川と広瀬川が合流するあたりで5時くらいになってしまったので、その合流しているところを観察してから家に帰りました。

いつの間にか、4月になってしまいました。新年度に変わって、ぼくは小学6年生になりました。小学校最後の学年です。考えてみると、小学校1~3年の頃に比べると、時間のたちかたが早くなったような気がします。なにか、年をとるごとに時間の流れが早く感じるという法則を聞いたことがありますが、くわしくは忘れました。

エイプリルフールの日についたウソは、会社でお仕事をしているお父さんに電話をかけて、「家が燃えた」「ええっ」「ごめん、エイプリルフール」「俺の仕事中にそんなことで電話をかけるな」と話したくらいです。

そういえば、昨日近所の文房具屋で両面テープとかを買った帰りに、ペンギン駅前でクラスのはなちゃんが、両親の人と自転車をこいでいるところを見かけました。はなちゃんは、実は僕が好きな女の子です。これまで○○ちゃんと書いていましたが、本当ははなちゃんなのです。

はなちゃんの家は三姉妹で、はなちゃんは次女なんだそうです。髪がとても長くて、腰の上くらいまであります。小学3年生の頃から伸ばし続けていると聞いたことがあります。なんでそんなに長い髪がいいのかはわかりません。はなちゃんのお姉ちゃんが髪で遊ぶことがあるらしく、はなちゃんは髪に時々編み込みをしてみたり、ヘアアクセサリーをして学校に来ては、他の女子たちに「かわいー、かわいー」と言われています。

ちょうど仙台は、やっと桜前線が北上してきていて、駅前のロータリーに何本か植えられているソメイヨシノも花をつけていました。はなちゃんが向こうから自転車に乗ってやってくるのを見つけると、僕の心臓は急に、水風船がハレツするみたいに動き出して、心拍数が3倍くらいになりました。

はなちゃんの後ろにはお父さんとお母さんらしい人が、はなちゃんと一緒に自転車をこいでいました。なんとなく僕はうれしくなりました。僕が勇気を出して「はなちゃん」と声をかけると、はなちゃんは目を丸くして口を開けて、驚いたみたいな顔で「けりもくん」と言いました。そのままはなちゃんは僕を通り過ぎて行きました。

そのあと角を曲がるまでに、はなちゃんは2、3度振り返ったので、僕は立ち止まって手を振りました。風が強く吹いて、桜の花びらがひとひら舞いました。ご両親がはなちゃんに何か話しかけているのが見えました。もしかしたら、ちょっとからかい気味に、今の男の子は誰なんだと聞いているのかもしれません。そう想像すると、ぼくはなんだか嬉しい気持ちがしました。

でも、もしかしたら、あまり後ろを振り向いて自転車でコケたら危ないから、はなちゃんに前を向けと注意していただけかもしれません。たぶん、はなちゃんは髪が長いので、振り返ると髪の毛が目のあたりにまとわりついてしまい、視界がふさがれて危険なのです。

どちらが正解なんだろう? 

まあいいや。


おわり。